97年の7月より、JR新宿駅西口の地下にあるK-12番という柱で月に一回、毎月12日に路上にて絵画の展示をしていたシリーズです。
この柱の場所は通勤通学の人通りが非常に激しい場所と、ホームレスの人々が集う段ボールハウスの長屋が並ぶ場所との、ちょうど境に位置していました。
当初は1年間の予定でしたが、98年の2月に段ボール所帯一帯が火事になり、焼死者が出てしまったためにこの場所の再開発が決定し立ち入り禁止区域になったため、やむをえず3月に9ヶ月で展示を中止しました。
ここでの鑑賞者は主に駅を利用する通りすがりの方々と、ホームレスの方々でした。
97年の年末、ある一人のホームレスのおじさんが、長屋のはしにちょうど空いている場所があるので、今度わたしに段ボールギャラリーをたててくれると言いました。彼は段ボールで家をつくる“大工”の係でした(彼らは段ボールと割り箸とヒモで上手に家をたてるのです)。つまり、私は新宿の一等地のギャラリーのオーナーになれるというわけです。
私はもちろんその申し出をありがたくお受けしました。ギャラリーの中にはゴッホのひまわり、ゴーギャンの風景画、セザンヌの静物画などなど、新宿界隈にある美術館が所蔵している名画の数々を模写して飾りました。それらは段ボールの新宿美術館に非常にふさわしい作品群だったと思います。しかしあっけなく、たった1ヶ月ほどでこのギャラリーは他の長屋とともに焼失してしまい、幕を閉じたのでした。